MOON CLOAK JELLYFISH

ストーリー
……さて、はじまりはどこからでしょうか。
拾ったのか、落としたのか。
夢だったのか、現(うつつ)だったのか。
誰かがついた、たったひとつの嘘。
誰にも言えなかった、たったひとつの本音。
誰かを焦がれて、伸ばした手。
誰かを想って、願った未来。
誰かに向けて、笑った昨日。
この物語に登場するのは、五人の少女と、一人の少年。
料理を諦めきれない少女、
背中を追い続ける少女、
心に傷を負ったまま立ち尽くす少女、
過去を抱き続ける少女、
そして――生きたいと願った少女。
その中心にいるのが、
白骨七難という、冴えない────でも目を逸らさない少年です。
落語なんて古臭いと言われても、彼は舞台に立ち続けます。
笑われても、笑わせたいから。笑ってほしいと願っているから。
月が、くらげに衣服を着せるように。
淡い光が、すこしだけ傷を隠してくれるように。
やわらかな日常の中で、
彼らは何度も転び、何度も立ち上がり、それでも前に進んでいきます。
無患子は三年磨いても黒い。
ならば黒いままで、美しいと言ってくれる誰かに出会えばいい。
そのままで笑い合える世界があると、信じればいい。
毎夜月に祈った戦国の武士、山中鹿之助は言いました。
「願わくば、我に七難八苦を与えたまえ」と。
苦しみの先にしか、手に入らないものがある。
その先にある【誰かの幸せ】こそ、願いの本懐だと。
この物語の少年もまた、
人の痛みを背負い、
誰かの未来を笑って受け取ろうとします。
たとえ三流だと笑われても、
それでいいのです。
この物語は、
三流の喜劇で、いいのです。
なぜなら――
その舞台の上で、
彼らは確かに、生きていたのですから。
それでは、開幕と参りましょう。
『moon cloak jellyfish』――七難八苦、笑って拾う物語を。